高橋正夫 この世は いい思い出を つくるところ 八重櫻を 二人で仰ぐ 中山純花 ゆうべ散った 壕辺の桜は花筏 浮鳥が あるかなきかに その座をゆずる |
長野洋子 生きる 長さは 何かに 似ている 一日花か 石埜恵津子 藤の雨 傘に受け そのしづく 傘に たたむ |
長松あき子
雨の日に 届いた手紙は 郵便受けに 小さな ひだまりをつくる 横山美絵 間引菜を買う 朝市で 老婆にもらう ぬくい 釣銭 |
佐々木千恵子 白粉の (おしろい) ひと筆がきが 飛びはねて 初夏の祭は 緑に溶ける 高橋正夫 薫風よ 女は 美しい 家具 だった |
青空みわこ
ゆれるのは 首からかけた ラジオ体操カードと 髪の寝ぐせ 今日から夏休み 村嶋俊彦 開けられることのない 窓の一つは有って それぞれの家は 年月を 刻んでいく |
米山雲雅
白い山が 緑に包まれ いつか 真紅に燃えた そして また白 大須賀洋子 ブロンズの乙女 恥らう街角 雪衣 はらり 脱がす冬陽に |
麻生祐二 竹雪洞に 薄を挿して 秋の 気配を 白壁に映す 黄桜住人 今日もまた 新しい 等高線が 顔覗かせる 北国の棚田 |