3、歴史的背景
「記紀歌謡」と総称される詩歌のおおらかで自由な調べは、『万葉集』の前半部の歌にも引き継がれています。
その後の日本の詩歌は、中国文化の影響を受けて七五調、五七調へと急速に移行していきました。
5音7音が語呂よく感じるのは、日本人が千年以上も似た形式で詩歌をつくってきたため、私たちにそのリズムが染みついているからにほかありません。同じ日本語文化圏の沖縄の歌謡が五三や五四だったり、八六であることからも、日本語の音律はもともと自由であったことが分かるのです。
時代は大きく下り、明治期に入りますと、西洋文化の移入とともに言文一致の運動が起きてきます。『新体詩抄』が刊行されると詩歌にもその波が打ち寄せ、自由詩、口語短歌や自由律俳句などへ継承されていきました。
五行歌はその流れを汲むものであり、和歌の言文一致の、ひとつの完成形だと考えられます。
いわば五行歌は、失われた古代歌謡の自由闊達な調べを現代の言葉で蘇らせたものといえるのです。
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