5、五行の制約
五行歌が持つ適度な制約は、表現を研ぎ澄ます効果だけではなく、私たちの心理にも大きな影響を与えています。
長さに制約がないと、どうしても長く書きがちになるため、思いが定まりにくいようです。これは普段、私たちが自分で感じているほど自分の考えを整理していないからだと思います。
しかし、五行という制約の中で表現するには、無駄を省いて簡潔にしなくてはなりません。そのため、意識の集中はもちろん、時には精神統一までして物事の核心に迫ろうとするのです。
当然、その行為の中で思いが浄化されていき、気づけば悩みや問題の答えを見い出していた、ということが起きてくるのです。
五行歌を創るということは、このような心理上の整理を同時に行っていく作業でもあります。
日常、言葉を使って物事を考え、判断している私たちにとって五行歌という器は、内面世界を豊かに広げ、表現していく文芸であると同時に、自分の思いや感情を確認するための大切な道具にもなりうるのです。
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